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スマートフォンは脳のリソースを奪う

実は、人間には集中力があるように見えますが、私たちの脳は集中するようにはできていないのです。
 何かに集中して夢中になっていた人類の祖先は、みんな食べられてしまいました。
 代わりに、常に気を抜いて周りを見回していた人たちが生き残った。
 周りを見ていた人が生き残ったというよりも、頻繁に周りをチラ見して、何か変化があれば、脳が「やっぱり!」と言ってくれるようになっていたのです。何かが変われば、脳は「やっぱりね!」と言います。何かが変われば、脳は「やっぱりね!」という物質を放出するのです。これは快楽物質であると同時に、不安をかき消す物質でもあります。
 これが、結果を過大評価する理由です。
 というのも、脳の構造上、マルチタスクをしている人は皆、マルチタスクで仕事の効率が上がったと錯覚してしまうのです。
 ところが、冷静になって確認テストをしてみると、実はマルチタスクをしてはいけない環境でやったほうが、仕事の効率が良かったということがわかったのです。
 ただし、脳内に快楽物質は発生しませんでした。しかし、全体の作業量と、どれだけの問題を解決したかを比較すれば、シングルタスクの方が効率的であることは明らかです。
 しかし、人間の脳はそのようなシングルタスクに集中しないように進化してきたので、マルチタスクをすると快楽物質が出る。だから、ついやってしまうのです。
 では、携帯電話を見たり触ったりしない方がいいのでしょうか?これについても、さまざまな実験が行われています。
 500人の大学生を対象にしたテストでは、さまざまな条件で携帯電話を触らないようにしてもらいました。
 まず、サイレントモードにしたり、ポケットに入れたり、電源を切ったりしました。
 一方のグループは携帯電話の電源を切ってポケットに入れたまま教室内でテストを受け、もう一方のグループは携帯電話の電源を切ったまま教室の外に出た、つまり教室内に携帯電話を持ち込むことは許されなかったのです。これにはちゃんとした理由がありました。
 その理由を知ることで、彼らは携帯電話をポケットに入れていることだけでも意識するようになりました。