ところが、子供が生まれると欲望は再燃します。自分がかなえることが出来なかった夢を子供に託そうとするわけです。自分が実現できなかったことを子供に託すというのも無責任な話ですが、時としてこうした欲求は自分が子供のときよりも苛烈で長く続くものです。自分が苦労しなくとも子供にやらせるだけで済むからです。お受験と呼ばれる幼少期の受験騒動も、子供のスポーツ活動への過度なバックアップも、自分がかなえられなかった自己実現への補償行動と言えるかもしれません。
自分も死んでしまえば土に還るだけですし、子供も同じく土に還るだけです。この世で賞賛を受けて、豪華な家に住み、おいしいものを食べ続けても、長い時の流れから見れば、他の生命となんら変わりはないのです。せめて普通に、人をうらやむことなく、心静かに生活が出来るのであれば、実は幸せに過ごせるのです。